みなさまこんにちは。hatenaで7つめの記事は、前回の記事の中から、特に楽しかったB-7のセッションのレポートになります。*1
ボリュームとしては長めになってしまいましたが、いつものようにラフなイラストも交えておりますので、同じセッションを聞かれた方の振り返り、初めてロイロノートというものを聞く方への参考になれば幸いです。
はじめに
全体の感想 / 学び
先の記事でも触れた通り、タイトルから予想していなかった、でも非常に「楽しい」お話でした。お話を伺えて、本当によかったな、というのが正直な感想です。
このあたり、うまく伝わればいいな...と思いながら、記事を書いています。
なぜこのセッションを選んだの?
実は、ロイロノートのことは全く知らない状態でお話を伺うことに。
勝手に、タイトルと概要から、「エンジニアが生き残るための学びの方法」的なお話をイメージしておりました。つまり、スピーカーの杉山さまの学びのストーリーを伺えるかと思っていたのです。(それはそれで大好きな内容なのですが...)
思っていたものと違っていた!
ところが、お話を聞いてみると、どうやらご自身ではなかった!
「新しい教育サービスを作っていく中で学んだ、大人も使える最新の教育メソッドをご紹介します!」との冒頭でのお話の通り、プロダクトを教育の場に導入してみて、そこから得られた学びの姿勢とは、といったお話でした。
ちょっと違った?と思いつつも、子どもを持つ親として、これはこれで非常に伺ってよかったと思えるお話でした。*2
ロイロノートって?
杉山さんが作られた、教育用アプリケーションです。
ただし、「問題が出てそれに回答して成績を判定する」といったものではありません。
思考方法やプレゼンテーション、表現方法を支援したり、先生やクラスの仲間たちと共有したり、フィードバックを受けやすくするためのツールと言うのが適切でしょうか。
また、思考の単位をカード(付箋的なもの)として扱っていて、それをあとで自由に整理しなおしたりできる機能があります。
基本は授業の中でノートと並ぶツールのため、場所を取らず持ち運びのしやすさを考慮し、タブレットやスマホでの利用を想定した作りになっています。
セッションの流れ
こんな流れで進みました。
- 杉山さま自己紹介
- 本日の目的の説明
- 今、教育がどうなっているの?
ロイロノートを通した教育の現場での気づきや、子どもたちの姿を紹介 - 学び方を実践するためのワーク
- まとめ
杉山さん自己紹介
杉山さんのお話は、ヘッドセット&タブレットを片手にお話が始まりました。
「あれ、TEDみたい?」*3という印象で、それだけで楽しそうな雰囲気でスタート。
もともとはゲーム会社でプログラムを組んでいらしたそうですが、ゲームでの手法を応用した動画編集ソフトを個人で作成してみたところ、IPAの未踏ソフトウェア事業に採択され、そこから起業、ロイロノートというプロダクト作りに進まれたそうです。
それだけでも非常に面白いストーリーなのですが、本題はそこではありませんでした!
今、教育の現場はどうなっているの?
まずは、ロイロノートを教育の現場に導入してみての、杉山さん自身の学びや、現場についてのお話が始まりました。*4
まず出てきたのは、「アクティブ・ラーニング」というキーワード。
実のところ、わたしも就学した子どもをもつ親なので、このあたりは自身の生存戦略云々ではなく、親としても外せないキーワード。塾関連でも耳にしています。
ただし、親目線で見ると、このあたりは学校によって様々、模索しているような雰囲気を感じていましたが...。
授業スタイルの問題点と、これからの学び方のこと
まずは、杉山さんから見た教育の現場についてのお話が。
- 今の教育現場では、40人くらいの生徒に対して先生が一斉に一方向で行う、150年くらまいからの授業スタイルと変わっていない。
- 受け身の授業で、3分で眠くなってしまうのも、それは当然。
- これが、アクティブ・ラーニングと言って、変わりつつある。
- 生徒が主体的に関わり、アウトプットする、能動的な学習が求められている。
なるほどと思うものばかり。
続いては、上記のような課題をふまえつつ、ロイロノートを授業に取り入れてみた事例をご紹介いただきました。導入は公立私立合わせて1000校近くになるそうです。
公立の小学校の例
京都の小学校、高学年での利用例が紹介されていました。
- ノートや教科書と一緒に、普通の教室で利用
- 自分の考えを発表するツールとしてロイロノートを利用
- 学習意欲のすごい生徒さんのなかには、自分からロイロノートのイベントでプレゼンテーションに応募してくれた
(これもヘッドセットとタブレットを持ってTEDみたいに自分の考えをお話していたので、びっくり!)
私立中高での例
- 音楽の歌の練習に活用する例では、自分の歌っている姿を自撮りして、自分で見返して良いところ悪いところを確認していく
- このアプローチでみんな歌がどんどん上手くなった!
- 小・中学校では、教育現場にスマホを持ち込むのは抵抗があるため、タブレット中心での利用
- 高校だと、各自のスマホに導入して課題をこなしたり共有したりというスタイルが多い
また、台湾の学校でも利用してもらっているそうで、「使えるものは使っていこう」というマインドセットで、日本以上にうまく利用しているとのことでした。
もともとはロイロノートはアウトプットのためのツールなので、画像や動画や素材を編集し、表現しやすいもののようです。
ツールの力を借りて、アウトプットでの成功体験をした子どもたちは、学習意欲も高まって凄く伸びていった、とのことでした。
大人のモチベーションはどうすればい?
とても意欲のある子どもたちの姿を見せていただいたあとで、では大人は?というお話に。杉山さん曰く....。
- 今はオンラインの学習コース、ソフトはたくさんあるし、学ぶ機会はとても恵まれています
- でも、達成率は思うほど良くない(というか、低い)
- どうやったらモチベーションを保ちつつ学習できるのだろう?
個人的に、ここまでで「アウトプットは大切だな...」と実感しましたし、お話を伺っていた方々もそれは良く感じられたと思います。
その上で、さらに「何かを学ぶ」ときには、こうしたことを意識することが大事とおっしゃっていました。
- 学んだことを自分の言葉で「要約する」こと
- 学ぶ前には、「これがわかるようになりたい」といった目的、テーマを持つこと
本質的な問いを持って学習に望むことが大切 - 学んだ後に、そのテーマがどうだったか、どう考えや理解が変わったかを振り返ること
- ロールプレイング的に何かの問題に直面したと仮定して、課題解決に取り組んでみること
こんなワークをしてました!
さて、講演資料にも書かれている通り、デブサミのセッションも受け身ではなく、参加者みなさんが能動的に参加し、アウトプットする体験をしてもらうのが一番!とのことで、ここからワークとなりました。
時間の関係でワークは2つほどになりましたが、こんなことを行いました。
- 今日受講したセッションについて200字程度の要約をしましょう
ただし、「楽しかった」「面白かった」という表現はNG
ロイロノートを用意できている人はそちらに書いて提出、そうでなければTwitterにハッシュタグを付けて投稿してください
紙に書くとかでもいいです(けれど提出やTweetで他の人に共有するほうがいいです) - このセッションの振り返り
同じく200字程度で要約や振り返りをまとめて提出してください
ワーク&まわりのようすなど
それぞれのワークは、5分程度の時間をいただいて取り組みました。
最初は、みなさん周りの様子を伺いながら、そろそろと手を動かしたり考えたり。
(わたしはお話が面白くてノートにメモするほうに集中していたので、アプリは使わず手書きで要約をして、Twitterにアップという形を取りました)
5分ほどのあと、杉山さんがロイロノートを使って提出されたみなさんの要約(カード形式)を画面に表示してくださいました。
先生として利用する場合は、提出結果を一覧で見ることができるので、これまた楽しい感じです。ちょうどクイズ番組で回答者の答えを全てパネル状に映し出して、みんなでわいわいと眺めるのに似ています。
以下は、わたしの提出分です。
提出!#devsumiB pic.twitter.com/PVOr4ZINTM
— たかのあきこ@野生のウサギ (@akiko_pusu) 2018年7月27日
振り返りも提出!
— たかのあきこ@野生のウサギ (@akiko_pusu) 2018年7月27日
ありがとうございました!#devsumiB pic.twitter.com/hL3iGDhNF6
ワークを踏まえての解説
どちらも「要約する」というワークでしたが、この点については、このような効果があるとのお話でした。
- 要約することで、文章力が上がる
- 記憶が定着する
実際に、先に出てきた(凄い)小学生たちも、こうした要約、振り返りと、そこからの気づきを通して話す力や文章力が飛躍的に向上したそうです。
時間の関係でできなかったワークについても、以下のような効果があるとのこと。
- セッションや学習を通して「できるようになりたいこと、本質的な問い」を持って望むことで、主体的に学習に関わることができる
- 学習前の予備知識を記録しておき、学習後の要約と比較することで、自身の成長がわかる
- ロールプレイングに近い形で、実際の問題に当事者になった気持ちで取り組んでみることで、モチベーションを上げつつ学習できる *5
- たとえば、「自分がLINEのエンジニアになったつもりで、この技術的課題に取り組んでみる」「有識者になったつもりで新元号について考えてみる」など
とくに、ストーリー仕立てで、当事者になったつもりで考えていく(その結果を発表する前提で取り組む)ということは、子どもたちもワクワクして取り組んでいるようです。
実際にわたしも、「こういう立場だったらこう言った行動を...」と、理想とする立場になりきって考えるというのを意識するきっかけをいただきました。
杉山さんがおっしゃっていたことで印象深かったことの1つが、この「ストーリー」。
仮想的なゲームの世界であっても、何かのモチベーションにつながるものは、「人」から「ストーリー」として与えられる、ということでした。
お話を伺っての感想
以上のようにお話を聞いて、改めて、学ぶことの楽しさを感じました。(楽しい!という感想はNGかもしれませんが)
また、子どもたちの学校の様子を時折見学しているのですが、そこでも今回のお話を伺ったことで色々見えてくるものがあるな...と感じています。
全てではないにしても、「こういった教育を受けてアウトプットを広げていく子どもたちと、果たしてわたしは将来どう向き合っていくのだろう?」という身震いもあります。
一方で、アウトプットを求められるというのは厳しい世界で、それが苦手な子どもたちをどうフォローしていけばいいのだろう?といった問いも生まれました。
もちろん、プロダクトに関しても非常に興味を持ちました。
細かくは触れられてはいませんでしたが、プロダクトの開発の大変さや、課題のようなものも、ちらりと杉山さんが語られていたので、そういうあたりも機会があれば伺ってみたいなとも思っております。
参考リンク / 関連資料など
杉山さんご本人の講演資料はこちらです。Scrapboxで提供してくださっています!
また、わたしの振り返り&まとめの際には、SIS Labさまのまとめ記事も参考にさせていただきました。
ワークのお題は、ロイロノートにアップした方もいらっしゃれば、Twitterに投稿された方もいらっしゃいました。わたしのメモがまとめ画像に採用されたようで、恐れ入ります...。
その他のわたしのつぶやき
たのしい! #devsumiB
— たかのあきこ@野生のウサギ (@akiko_pusu) 2018年7月27日
暗く写ってしまいましたが、セッション中のワークでした。
— たかのあきこ@野生のウサギ (@akiko_pusu) 2018年7月27日
ロイロノート、面白い!
資料はスクラップボックスでした(╹◡╹)
役になりきって学ぶのも楽しそうですねー。#devsumiB 杉山さま
後日譚
アウトプットが大切、振り返りが大切...ということで、個人的にこのセッションはブログに書き留めておきたいな、と思っていた次第。
なんとかまとまりがないながらも、頑張って書き起こしてみました。
セッション中にメモをとったノートを読み返していくと、たしかに「あんなお話があったな」「こんなことがあったな」というのが思い出されます。
まとめるとなると時間はかかりますが、呟きっぱなしだったり、メモを取りっぱなしな場合よりは、はるかに身になっているなあと感じた次第です。
でも、盛りだくさんだったので、とても200字にはまとめられませんでした...。
*1:
時々この形式でレポートを書いたりしています。たとえばこちら: DevLove / 縦サミット参加レポート (3) - 鈴木さん / 和田さん編
*2:登場する子どもたちの積極性に対し、我が子を振り返ると「ああ、親としてこれはどうしよう??」と、ドキッとすることもありましたが...。
*3:
*4:ちなみに、そもそもは教育界にコミットするつもりではなかったそうです!
*5:パフォーマンスタスク、というそうです